「中小企業の日」制定を機に中小企業関係者に聞く3:山本尚史拓殖大政経学部教授

2019/08/19 特集
not set 山本教授(右)と茂木氏

 経済産業省中小企業庁は今年、中小企業・小規模事業者の存在意義や魅力を発信するため、中小企業基本法の公布・施行日である7月20日を「中小企業の日」、7月の1か月間を「中小企業魅力発信月間」に制定した。これを機に中小企業の魅力や将来展望を聞くシリーズ、3回目は中小企業が成長して繁栄する地域の環境づくりを進める「エコノミックガーデニング」を研究している山本尚史・拓殖大政経学部教授に聞いた。(聞き手は中小企業庁長官官房総務課の茂木高志総括課長補佐)

茂木 中小企業が魅力的な存在であるということをもっと社会に発信したいと、中小企業の日、中小企業魅力発信月間を制定しました。山本先生は企業の周りの関係者がいい環境を作り、それが企業の成長に貢献するという「エコノミックガーデニング」を研究されておられます。中小企業の魅力とはどんなところにあるとお考えですか。

山本 大企業以外は全部中小企業となるわけですが、ご承知のように中小企業は多種多様です。いくつかに分類して申し上げたほうがわかりやすいかなと思います。

 ひとつは「臥龍鳳雛(がりょうほうすう)」企業。臥龍鳳雛とは、中国の歴史書「三国志」にある言葉で、地に伏した龍と鳳凰の雛(ひな)を意味しています。企業区分としては、臥龍とは目立ってはいないが優れた企業、鳳雛とはこれから大きく羽ばたいていこうというベンチャー企業です。世に知られていない優良企業も、まだ若いですけれどもひとたび勢いを持てば全国市場やグローバル市場まで飛んでいく成長力のある企業も、先見性があり人をひきつける魅力がありますね。

 二番目は「鶴亀」、これは長寿企業・老舗企業です。地元に根づいて事業承継も上手で世の中のニーズを察知して業態を少しずつ変えながら、急成長はしないけれども長い間繁栄し続ける企業です。こういう企業は間違いなく地元から愛されていると思います。三つ目のタイプは「若虎」です。地元市場を中心に活躍しますが1業種ではなく複数の業種に展開していくところに特徴のある、複合型の企業です。こういった企業には地元に根付き、かつ成長するという二つの魅力があります。

 地元に立脚していること、急成長するかあるいは長命か、いずれにしても未来を大きく創るというのが中小企業の魅力であろうと思います。

茂木 オンリーワンかつナンバーワンの技術・サービスを持っている臥龍鳳雛企業はもちろん、鶴亀企業も歴史や積み上げた価値が大きなポテンシャルを生み出していると感じます。若虎企業は地域の特性や環境に応じて形を変えていくというイメージかと思います。

 社会が中小企業を応援する空気に包まれていることが地域経済にとって重要と考えます。経営者や事業者だけではなく、家族や友人、子供たちからも「ここは魅力がある、将来は自分も活躍したい」と思ってもらえるような企業や地域をつくっていきたいです。山本先生はどうお考えですか。

山本 地元の中小企業の魅力を地元の子供たちが知らない、学校の先生たちがご存じないことがすごく残念です。地元の中小企業について、学校の先生や、子供たちを教えるスポーツチームのコーチがもっと身近であれば、子供たちからなにか相談があったときに、あそこの会社ならきっとやってくれるよ、あの会社は魅力あるよと教えることができるのではないか。学校というメディアのなかに「中小企業」というコンテンツを入れるのは非常に大事と思います。

茂木 企業を取り巻く環境づくりという意味では、先生が研究されている「エコノミックガーデニング」もありますね。

山本 エコノミックガーデニングは、やる気のある中小企業が繁栄して長生きできるような地元環境をつくっていく取り組みです。もともと米コロラド州リトルトン市で始まりましたが、ここ数年間は日本の自治体でもどんどん取り入れています。私は千葉県の山武(さんむ)市の取り組みに関わっていますが、市役所と商工会青年部がイコールパートナーとして地元企業を応援するという全国でも珍しい取り組みです。

茂木 応援環境が整えば中小企業は大きく羽ばたいていくものでしょうか。

山本 経営者が自分の力を伸ばすことができるのが大きいですね。従業員との関係も良くなる。従業員も、職場での自己実現といいますか、会社が伸びると同時に自分も伸びていく。日本の中小企業は会社のなかでの人間関係や、会社と地域との関係を重要視しています。企業が育つことで地域社会が育っていけば理想的な未来につながると私は思います。中小企業を大切にすることで各地域に独自の花が開くような多様性にあふれ安定した地域社会ができるのが望ましい未来ではないかと考えています。

茂木 最後に中小企業の日、中小企業魅力発信月間に対する期待をお願いします。

山本 この中小企業の日に何を盛り込むか、ただ単にビジネスだけではなく、愛といいますか慈悲につながる気持ちを盛り込んでいただきたいですね。

中小企業ニュース編集部

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