【特集】「新価値創造企業の横顔」マイコプラズマ感染症の新たな診断薬を開発:エムバイオテック

2019/03/07 特集
この記事の内容 ・大学時代から難病治療を志していた医者が起業
・長年の研究成果でマイコプラズマ感染症の新たな診断薬を開発
・既存の検査方法では発見できない感染者の治療を可能に
not set 診断と治療の可能性を説明する松田氏

 中小機構のインキュベーション施設である千葉大亥鼻イノベーションプラザに設置した研究所で、マイコプラズマ感染症の新たな診断薬を開発し、ワクチンなどの創薬研究を続けているのはエムバイオテック。1979年に入学した山口大学医学部時代から免疫を学び、難病治療を実現しようと志していた松田和洋氏が2005年に設立したベンチャー企業だ。

 マイコプラズマは病気を引き起こす微生物の一種。咳、のどの痛み、発熱などの風邪症状や肺炎、全身の血管炎や神経炎、メンタルヘルス疾患、認知症、ギランバレー症候群やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経疾患、リウマチ性疾患、皮膚・血管炎疾患など多くの病気を引き起こすとされている。

 しかし、世界的に認められている検査方法には検出感度に限界があり、感染状況が一定水準を下回る患者はマイコプラズマに感染していても診断できないという。

 松田氏は、長年の研究でマイコプラズマの抗原物質(免疫反応を引き起す物質)の構造を特定し、その合成に成功。患者の血中に生じた抗体(体内から菌を追い出そうとする対抗物質)の量を測定することで、症状がない場合でも感染状態が分かる診断薬を開発した。原因不明の症状がマイコプラズマ起因か否かが分かるため、既存の検査方法では診断できなかった患者にも抗菌剤を処方できるようになったわけだ。

 日米欧で特許も
 マイコプラズマの抗原物質の構造を突き止め、抗原物質を化学合成する技術も確立。日本をはじめ欧米やアジア諸国で特許も取得したという。「マイコプラズマ感染症のワクチンを安定的に製造できるようになった。これで多様な治療・予防戦略が立てられる」と自らの研究成果を解説する。

 松田氏が千葉大亥鼻イノベーションプラザに入居して研究所「マイコプラズマ感染症研究センター」を設置したのは12年のこと。現在は、千葉大学や山口県立総合医療センターなどとの連携をはじめとする重要な共同研究拠点になっている。「新価値創造賞」エントリーは同プラザの宗像令夫チーフ・インキュベーション・マネージャーの推薦だった。「受賞はマイコプラズマ感染症対策の重要性や価値を広く認識して貰える機会になった。特に急増が指摘されて久しいメンタルヘルス疾患の原因が、患者の性格や感受性といった人間性にあるとは限らず、マイコプラズマの可能性があると知られたことは意義深い」と語る。

 事業推進に要支援
 松田氏の診断薬による治療は、既存の検査方法ではマイコプラズマ感染症と診断できない症状に施されるため現状では保険適用外だが「肺炎球菌による肺炎を予防するワクチンは世界で年間1兆円以上売れている。マイコプラズマ感染症のワクチンができれば、多くの難病予防につながる。爆発的な成長性を持っているビジネスプランではないか」と高い事業性に期待している。

 一方、事業推進には多額の資金が必要となるため、当面はAMED(日本医療研究開発機構)の支援などで賄う計画だ。「マイコプラズマ肺炎は法律で感染症に指定されているが、マイコプラズマを原因とする肺炎以外の疾患の指定もお願いしたい」と国策としての治療と予防を求める。

 「マイコプラズマ感染症の検査への認知度が高まり、世界的な包括医療につながれば、さらに効果的な予防医療となるだろう」

 松田氏は、国際的な医療の仕組みの確立にも意欲を見せている。

企業データ

エムバイオテック
代表取締役松田和洋氏
本社東京都世田谷区深沢2‐1‐3‐1103
研究所千葉大亥鼻イノベーションプラザ(千葉市中央区亥鼻1-8-15-206 千葉大学亥鼻キャンパス内)

電話090-8486-5727
設立2005年1月
従業員数2人

中小企業ニュース編集部

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