“悪意の商標出願”事例を解説:東京都などがシンポ

2018/12/10 イベント
not set 【写真説明】“悪意の商標出願”の予防・対策について話し合った

 東京都、東京都中小企業振興公社は12月7日、東京都千代田区のイイノホールで「中小企業における知的財産戦略の新潮流~今を、そしてこれからを生き抜く」と題した知的財産シンポジウムを開いた。骨董通り法律事務所の福井健策弁護士が、ビーグデータや人工知能(AI)生成物など新たな情報材の知財制度上の最新状況について講演したほか、アジア地域を中心に増加する“悪意の商標出願”の対策に関して、実際に被害にあった中小企業経営者や弁護士ら5人がパネル討論した。中小企業経営者ら約400人が参加した。

 基調講演で福井氏は、記事作成・翻訳や作曲、画像の自動カラー化など、AIの技術革新は急激なスピードで進んでいると強調。リライトツールを使って、他人の文章を大量に流用した「まとめサイト」が閉鎖された事件に言及し、今後、知的財産分野でAI化が進めば、今の10倍、100倍もの商標が大量出願される可能性があると指摘した。

 またビッグデータやAIを巡る知財の論点や、2019年1月に施行されるデジタル化に対応した改正著作権法を解説。「イノベーションの成果物の保護と、成果物の自由なアクセスを守ることの最適なバランスが重要だ」とし、法制度だけでは時代の変化に追いつかない現状から、規約や仕組み、指針など法制度以外の多様なツールの組み合わせが必要と話した。

 パネル討論会で話し合われた“悪意の商標出願”は、他人の商標が当該国・地域で登録されていないことを利用して、不正な目的で当該商標を出願する行為。BLJ法律事務所の遠藤誠弁護士が、「青森」などの地名や「無印良品」などのブランド名、「ドラえもん」の画像など実際に中国で争われた事例を紹介し、「異議申し立てや無効審判で争えるが、多大な時間・費用・労力がかかり、負けるリスクもある」と話した。

 その上で、化粧品会社のレアナニ(東京都新宿区)の増田修司代表取締役が、実際に“勝訴”した事例を紹介。2016年に中国から引き合いがあり、東京都知的財産総合センターを通じて商標出願を調べたところ、前年に東京の展示会に出展した直後に4件の商標出願が中国であり、2件は登録されていることが分かった。これに対し、天達協和律師事務所の張青華弁護士に相談、半年間で証拠を固め、無効審判を申請した。

 “勝訴”した理由について、張弁護士は「対象となった社名・商標はハワイ語の造語で、中国人が考えたとは思えないものだったのに加え、“悪意の商標出願”に対して中国当局が規制強化したことが大きい」と話した。増田氏は「勝ったとはいえ、1~2年間は中国で販売する機会を損失した。ぜひ商標は早めに出してほしい」と参加者に訴えた。

中小企業ニュース編集部

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